太陽光パネルの直列・並列はこう決める 電気編

雪の残る太陽光パネル群の前で、作業者がタブレットを掲げ、直列と並列の違いを示している。左にはチャージコントローラーと「最大入力150V」「過電圧注意」の警告灯。

パネルを何枚まで直列にできるか。つなぎ方を間違えると、晴れた冬の朝にチャージコントローラーが壊れます。しかも日射がいちばん弱い時間帯に壊れるので、原因に気づきにくい。

先に、お手元の構成で確かめてください。

この構成で大丈夫か、その場で確かめる

お手元の数字を入れてください。冬のいちばん寒い朝の開放電圧を計算します。

133.3V 上限の 89%
0安全の目安 90%上限 100%
安全

計算式: Voc × 枚数 ×(1 + 温度係数 ÷ 100 ×(25 − 最低気温))。 開放電圧はパネルの仕様表(STC 25℃)の値です。日射があっても負荷がかかる前は この電圧が出ます。

数字を変えると判定もその場で変わります。「安全」以外が出たら、次の章の対処に進んでください。

目次

「危険」が出たらどうするか

直列を 1 枚減らし、減らした枚数で別の列を作って並列につなぎます。直列は電圧が、並列は電流が足し算になるので、並列に逃がせば電圧の上限を踏まずに同じ枚数を使えます。

直列つなぎ − と + を数珠つなぎにする 320W 34V / 9.4A 320W 34V / 9.4A コントローラーへ届く電気 68V / 9.4A 並列つなぎ +どうし、−どうしを束ねる 320W 34V / 9.4A 320W 34V / 9.4A 届く電気 18.8A 34V

図1 ― 橙の点が電流。直列は 1 本の流れ、並列は 2 本が合流する。

直列並列
電圧枚数ぶん上がる1 枚のまま
電流1 枚のまま枚数ぶん増える
ケーブルと距離細い線で遠くまで運べる太くなる。電圧降下も大きい
影の影響列の全体が引きずられる影のない列は生きる
曇天・朝夕立ち上がりが早い起動電圧に届きにくい
表1 ― 出力が同じでも、現場での性質は逆になる

パネルから小屋まで距離があるなら直列を長めに。時間帯で影が動いたり屋根の向きがばらばらなら、並列に分けたほうが総発電量は安定します。

なぜ冬の朝がいちばん危ないのか

パネルの電圧は気温で動きます。しかも直感と逆で、寒いほど電圧は上がります。夏の暑い盛りではなく、よく晴れた真冬の朝がいちばん高くなります。

上限 150V ― 超えたら壊れる 下限 53V ― 充電が止まる 0 100 200 電圧 V 133V 3 枚直列 −5℃ 冬の朝 123V 3 枚直列 25℃ 標準 111V 3 枚直列 60℃ 夏の昼 178V 4 枚直列 −5℃ で破壊 緑の線 = 最大電力点 Vmp。棒の高さ = 開放電圧 Voc

図2 ― 3 枚直列なら冬の朝でも窓に収まる。4 枚は上限を突き抜ける(点滅している棒)。

温度補正を省くと、この例では 14V ぶん見落とします。しかも開放電圧が出るのは夜明け直後、コントローラーが動き出す前です。いちばん電圧が高くなる条件が、いちばん無防備な瞬間に重なります。計算にはその土地の過去最低気温(気象庁の観測値の極値)を使ってください。

なお、上限のほかに下限もあります。こちらは夏の暑い日に効いてきます。

項目意味例(48V システム)
最大入力電圧超えると壊れる。保証も効かない150V
起動電圧これ以下では動き出さないバッテリー電圧 + 5V 程度
最低動作電圧下回ると充電が止まる約 53V
表2 ― 上と下、両方の窓に収める

影は 1 枚で列の全体を止める

電流は、直列につながれた全部を同じ量しか流れません。つまり 1 枚に影がかかると、その 1 枚の電流に全体が引きずられます。

影がかかった瞬間 日なた 9.4A 2.8A 日なた 9.4A いちばん弱い 1 枚が、列全体の電流を決める 960W ➜ 286W バイパスダイオードが働くと 日なた 9.4A 迂回(発電せず) 日なた 9.4A バイパスダイオードが迂回させる 68V × 9.4A ➜ 639W

図3 ― 点の速さが電流の大きさ。上段は影で遅く、下段はバイパスダイオードが迂回させて戻る。

バイパスダイオードは最初から入っていますが、それでも 960W が 639W まで落ちます。影は「少し暗くなる」ではなく「その列から 1 枚が丸ごと消える」と考えてください。電柱、アンテナ、冬の低い太陽で伸びる隣家の影。夏至の昼だけ見て決めないこと。

決め方の手順

STEP
コントローラーの最大入力電圧を確認する

150V なのか 450V なのかで、組める枚数がまるごと変わります。

STEP
その土地の過去最低気温を調べる

気象庁の観測データの極値を使います。体感や平年値ではありません。

STEP
上のツールで 90% 以内に収まるか確かめる

超えるなら直列を 1 枚減らし、別の列にして並列につなぎます。

STEP
夏の暑い条件で下限を割らないか確認する

Vmp × 枚数が最低動作電圧を上回っていること。割ると充電が止まります。

STEP
影の動きを 1 日・1 年で想像する

影が動くなら、直列を短くして並列の列を増やします。

安全のために

直流は交流と違って、自分で消える瞬間がありません。交流は 1 秒間に 100 回ゼロを通るのでアークが切れます。直流のアークは、繋がったまま燃え続けます。

  • 通電中にコネクタを抜かない。必ず先に直流ブレーカーで切る
  • 開放電圧の実測は、日射がある時間帯に、テスターの直流電圧レンジで
  • MC4 コネクタは必ず専用工具で圧着する。手締めは発熱して溶ける
  • ヒューズは並列の列ごとに入れる。1 列の事故で他の列から逆流するのを止める

よくある質問

パネルを増やすとき、直列と並列のどちらを足せばいい?

上のツールに増やしたあとの枚数を入れてみてください。90% 以内に収まるなら直列を伸ばすほうがケーブルが細くて済みます。超えるなら、同じ枚数の直列をもう 1 列作って並列にします。既存の列に 1 枚だけ足すのは避けてください。

中古パネルと新品を混ぜてもいい?

同じ列の中では混ぜないこと。直列は電流が、並列は電圧が揃っていないと弱いほうに引きずられます。混ぜるなら「同じ型番だけで 1 列」を作り、列どうしを並列にしてください。

MPPT ではなく PWM のコントローラーでも同じ考え方?

違います。PWM はパネルの電圧をバッテリー電圧まで落とすだけなので、直列で電圧を上げても捨てられます。直列で組むのは MPPT が前提です。


迷ったら直列は短く、並列を増やす。電圧の上限を踏むリスクが減り、影にも強くなります。その代わりケーブルは太くなるので、距離とのバランスで決めてください。

次は、ここで決めた電流値からケーブル径とヒューズを選ぶ話に進みます。

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