オフグリッドシステム設計シミュレーター
電力・蓄電池・PV・インバーター|変換ロスを含むリアル計算
はじめに ― オフグリッドシステムの基本を理解しよう
このページの使い方
このシミュレーターは、太陽光発電で電気を自給する「オフグリッドシステム」を設計するための計算ツールです。初めての方でも大丈夫。まずこのセクションで基本用語と仕組みを理解してから、各計算セクションに進みましょう。
電気の基本単位を知ろう
W(ワット)= 電気の「パワー」
今この瞬間に使っている電力の強さです。ドライヤーは1,200W、LED照明は60W。水道に例えると「水の勢い」にあたります。
Wh(ワットアワー)= 電気の「量」
パワー × 時間 = 使った電気の総量。60Wの照明を5時間使うと 60W × 5h = 300Wh。水道に例えると「使った水の量(リットル)」です。
kWh(キロワットアワー)= 1,000Wh
電気代の請求書でおなじみの単位。1kWh = 1,000Wh。一般家庭の1日の電気使用量は約8〜15kWhです。電気料金は1kWhあたり約30〜40円。
DC(直流)と AC(交流)の違い
DC(Direct Current / 直流):電気が一方向に流れます。太陽光パネルやバッテリーはDCで動きます。乾電池やスマホのバッテリーもDCです。
AC(Alternating Current / 交流):電気の向きが1秒間に50〜60回切り替わります。家庭のコンセント(100V/200V)はACです。
太陽光で発電した電気(DC)を家電で使う(AC)には、インバーターという変換装置が必要です。
オフグリッドシステムの4つの基本部品
オフグリッドシステムは、次の4つの機器で構成されます。それぞれの役割を水道システムに例えて解説します。
よく出てくる専門用語
準備OK! 基本用語を理解できたら、下のセクションに進みましょう。各セクションの計算結果は次のセクションに引き継げます。Section 0(変換ロス)→ 1(消費電力)→ 2(PV発電量)→ … の順に進めるのがおすすめです。
0. システム全体の変換ロスを理解する
オフグリッドシステムでは、太陽光パネルが発電した電力がそのまま家電に届くわけではありません。各機器を通過するたびに変換ロスが発生し、実際に使える電力は発電量の約75〜82%程度になります。
電力の流れとロス率
コントローラー
充電
放電
蓄電池タイプ別のシステム効率
| ロス発生箇所 | LFP + MPPT | 鉛蓄電池 + PWM | 説明 |
|---|---|---|---|
| ケーブル損失 | 2〜3% | 2〜3% | 配線長と太さに依存。太く短いほど低損失 |
| チャージコントローラー | 2〜5%(MPPT) | 15〜25%(PWM) | MPPT方式が圧倒的に高効率。※ MPPTはどの蓄電池にも使用可能 |
| バッテリー充電効率 | 約95% | 80〜85% | 充電時の発熱・化学反応ロス |
| バッテリー放電効率 | 約95% | 85〜90% | 放電時の内部抵抗ロス |
| インバーター効率 | 90〜95% | 90〜95% | 正弦波インバーター基準 |
| トータルシステム効率 | 約75〜82% | 約45〜58% | LFP+MPPTは鉛+PWMの約1.4〜1.7倍効率的 |
※ MPPT / PWMは蓄電池の種類とは独立して選択できます。鉛蓄電池でもMPPTを使えば効率は大幅に改善します。上記の表は「最高効率の組合せ」と「最低効率の組合せ」を比較した参考値です。
カスタムロス率計算機
1. 家庭の消費電力を正確に把握する
正確なシステム設計の出発点は、「自宅で1日にどれだけの電力を使うか」を把握することです。以下の計算機で、使用する家電と稼働時間を入力してください。
選定ルール 1: 消費電力量の算出
基本公式: 消費電力量 (Wh) = 消費電力 (W) × 使用時間 (h)
注意: エアコンや冷蔵庫はコンプレッサーの断続運転により、カタログ値の40〜60%が実効消費電力となります。下記の計算機では実効値を採用しています。
家電別 消費電力データベース
| 家電製品 | 定格W | 実効W | 起動電力 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| LED照明(リビング) | 40〜80W | 40〜80W | なし | ほぼ定格通り |
| 冷蔵庫(400L級) | 100〜200W | 40〜80W | 3〜5倍 | コンプレッサー断続運転 |
| エアコン(6〜8畳) | 500〜800W | 200〜400W | 3〜5倍 | インバーターエアコン平均値 |
| エアコン(10〜14畳) | 800〜1500W | 400〜700W | 3〜5倍 | 夏場・冬場で大きく変動 |
| テレビ(液晶40型) | 80〜120W | 80〜120W | なし | ほぼ定格通り |
| 電子レンジ | 1000〜1400W | 1000〜1400W | なし | 短時間だが高出力 |
| IHクッキングヒーター | 1400〜3000W | 700〜1500W | なし | 火力設定による |
| 洗濯機 | 300〜500W | 150〜250W | 2〜3倍 | モーター断続運転 |
| ドライヤー | 1000〜1200W | 1000〜1200W | なし | 短時間使用 |
| Wi-Fiルーター | 10〜20W | 10〜20W | なし | 24時間常時稼働 |
| スマートフォン充電 | 10〜25W | 10〜25W | なし | 2〜3時間/日 |
| ノートPC | 30〜65W | 30〜65W | なし | ほぼ定格通り |
| 電気ポット(保温) | 20〜40W | 20〜40W | なし | 沸騰時は700〜1000W |
| 扇風機 | 20〜40W | 20〜40W | なし | 風量による |
| 電気毛布 | 40〜80W | 40〜80W | なし | ほぼ定格通り |
消費電力量 計算機
使用する家電を追加して1日の合計消費電力量を計算します。
2. 太陽光パネル(PV)の発電量計算
太陽光パネルの実発電量は、カタログ出力(STC条件)から複数の損失係数を掛けて算出します。日本の地域別日射量データを基に、リアルな発電量を計算します。
選定ルール 2: PVパネル容量の決定
基本公式:
必要PV容量 (kW) = 1日の消費電力量 (kWh) ÷ 日平均ピーク日射時間 (h) ÷ システム総合効率
ピーク日射時間 = 1kW/m²の日射が何時間分に相当するかを表す値(地域と季節で変動)
地域別 年平均ピーク日射時間(水平面)
| 地域 | 代表都市 | 年平均 (h/日) | 冬季最低月 (h/日) | 夏季最高月 (h/日) |
|---|---|---|---|---|
| 北海道 | 札幌 | 3.3 | 1.6 | 4.6 |
| 東北 | 仙台 | 3.5 | 1.9 | 4.4 |
| 関東 | 東京 | 3.6 | 2.6 | 4.3 |
| 中部 | 名古屋 | 3.8 | 2.5 | 4.6 |
| 関西 | 大阪 | 3.7 | 2.3 | 4.7 |
| 中国 | 広島 | 3.8 | 2.2 | 4.8 |
| 四国 | 高知 | 3.9 | 2.7 | 4.8 |
| 九州 | 福岡 | 3.7 | 2.1 | 4.5 |
| 沖縄 | 那覇 | 4.0 | 2.7 | 5.2 |
PV発電における損失要因
| 損失要因 | 損失率 | 説明 |
|---|---|---|
| 温度損失 | 5〜15% | パネル温度が25℃を超えると出力低下。夏場は表面70℃超にもなる |
| 汚れ・影 | 2〜5% | 鳥糞、花粉、落ち葉、近隣建物の影。定期清掃で改善可能 |
| 経年劣化 | 0.5%/年 | 10年で約5%、20年で約10%の出力低下 |
| 方位・傾斜ロス | 0〜20% | 真南・最適傾斜角(30°前後)で最小。東西面は10〜15%減 |
| 配線損失 | 2〜3% | パネルからコントローラーまでの距離に依存 |
| パネル間ミスマッチ | 1〜3% | 直列接続時、最も弱いパネルに引きずられる |
PV発電量 計算機
選定ルール: 完全オフグリッド vs ハイブリッドで必要なPV容量
| システム方式 | PV設計倍率 | 説明 |
|---|---|---|
| 完全オフグリッド | 消費電力の1.5〜2.0倍 | 冬季の最低日射でも不足しない余裕が必要 |
| ハイブリッド(自給率90%) | 消費電力の1.2〜1.5倍 | 不足分は商用電力で補える安心設計 |
| ハイブリッド(自給率70%) | 消費電力の1.0〜1.2倍 | 経済的バランス重視 |
| 部分オフグリッド | 消費電力の0.5〜0.8倍 | ポータブル電源等での部分自給 |
3. 蓄電池容量の選定ルール
選定ルール 3: 蓄電池容量の算出公式
必要蓄電池容量 (kWh) =
1日の消費電力量 (kWh) × 自律日数 ÷ 放電深度 (DoD) ÷ バッテリー効率 ÷ インバーター効率
自律日数: 無日照が続いても電力を維持したい日数(通常1〜3日)
放電深度(DoD)の選定ルール
| バッテリー種別 | 推奨DoD | 最大DoD | 寿命への影響 |
|---|---|---|---|
| リン酸鉄リチウム(LFP) | 80% | 90〜95% | DoD 80%で3,000サイクル以上 |
| 三元系リチウム(NMC) | 70% | 80〜90% | DoD 70%で1,000サイクル程度 |
| 鉛蓄電池(ディープサイクル) | 50% | 50〜60% | DoD 50%超で急激に寿命低下 |
| 鉛蓄電池(AGM) | 50% | 50% | 50%超の放電は避けるべき |
蓄電池容量 計算機
選定ルール: 容量と自給率の関係
経験則: 蓄電池容量が5kWhを超えると自給率の上昇カーブは緩やかになります。5kWhで自給率約80%、10kWhで約90%、15kWhで約95%が一般的な目安です。完全オフグリッド(100%)を目指す場合は大幅なコスト増になるため、95%程度で商用電力と併用するのがコスパ最適です。
※ 注意: この自給率はPV(太陽光パネル)の発電量が消費電力を十分にカバーしていることが前提です。PV容量が不足していると、蓄電池をいくら増やしても自給率は上がりません。まずSection 2でPV発電量が消費電力の1.2〜1.5倍あることを確認してください。
4. インバーターの選定ルール
選定ルール 4: インバーター容量の決定
インバーター定格容量 ≧ 同時使用する家電の合計消費電力 × 1.25(安全率)
サージ(起動)対応: モーター搭載家電(冷蔵庫、エアコン、洗濯機)は起動時に定格の3〜5倍の電力が瞬間的に必要。インバーターのサージ定格がこれを上回ること。
インバーターの種類と選び方
| 項目 | 正弦波(純正弦波) | 擬似正弦波(矩形波) |
|---|---|---|
| 波形品質 | 商用電力と同等 | 階段状の近似波形 |
| 対応家電 | すべての家電に対応 | 一部の精密機器で不具合 |
| 価格 | 高い | 安い |
| 効率 | 90〜95% | 85〜90% |
| 推奨用途 | オフグリッド住宅(必須) | 簡易・キャンプ用途のみ |
インバーター容量 計算機
同時に使用する可能性のある家電の組み合わせから、必要なインバーター容量を算出します。
インバーター容量の市販品ラインナップ
| 定格容量 | サージ | 対応バッテリー電圧 | 適した規模 |
|---|---|---|---|
| 1,000W | 2,000W | 12V / 24V | 最低限の照明・通信機器 |
| 2,000W | 4,000W | 24V / 48V | 冷蔵庫+照明+テレビ |
| 3,000W | 6,000W | 24V / 48V | 一般家庭の主要家電 |
| 5,000W | 10,000W | 48V | エアコン含む全家電 |
| 8,000〜10,000W | 16,000〜20,000W | 48V | 大型住宅・完全オフグリッド |
選定ルール: バッテリー電圧とインバーターの関係
| システム電圧 | インバーター容量目安 | ケーブル電流 | メリット/デメリット |
|---|---|---|---|
| 12V | 〜1,000W | 大電流(太いケーブル必要) | 小規模向け。ポータブル電源に多い |
| 24V | 1,000〜3,000W | 中程度 | 中規模DIYに最適。バランスが良い |
| 48V | 3,000W〜 | 小電流(細いケーブル可) | 大規模向け。高効率。住宅用の標準 |
選定ルール: 1,500W以上のインバーターには24V以上のシステム電圧を、3,000W以上には48Vを推奨します。12Vで大電力を扱うと大電流が流れ、ケーブル損失と発熱リスクが増大します。
5. ハイブリッドシステムの設計と選定
商用電力を併用するハイブリッド方式は、完全オフグリッドに比べて安全性・経済性・実用性のすべてで優れた選択肢です。ここでは3つのハイブリッド方式の特徴と選定ルールを解説します。
ハイブリッドシステムの3つの方式
AC連携型(ACカップリング)
太陽光パネルの出力をまずグリッドタイインバーターでAC変換し、家庭内の分電盤に接続。余剰電力をバッテリー用のインバーター/チャージャーで蓄電する方式。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 変換回数 | DC→AC→DC→AC(蓄電経由時は3回変換) |
| システム効率 | 蓄電経由: 約70〜75%(変換が多くロス大) |
| メリット | 既存の太陽光システムに後付け可能 |
| デメリット | 変換ロスが最も多い。機器が多く高コスト |
| 適した場面 | 既存のグリッドタイシステムにバッテリーを追加したい場合 |
DC連携型(DCカップリング)
太陽光パネルからDCのままチャージコントローラーを経由してバッテリーに充電。使用時にインバーターでAC変換する方式。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 変換回数 | DC→DC→AC(蓄電経由時は2回変換) |
| システム効率 | 蓄電経由: 約78〜85%(変換少なく高効率) |
| メリット | シンプルで高効率。DIYに適している |
| デメリット | 売電には別途グリッドタイインバーターが必要 |
| 適した場面 | 新規でオフグリッド/ハイブリッドを構築する場合 |
ハイブリッドインバーター型(推奨)
1台のハイブリッドインバーターが、太陽光入力・バッテリー管理・AC出力・商用電力連携をすべて担う統合型。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 変換回数 | DC→AC(直接使用時は1回のみ) |
| システム効率 | 自家消費直接: 約92〜96%、蓄電経由: 約80〜87% |
| メリット | 最も高効率。1台で完結。自動切替。停電対応 |
| デメリット | 機器単価が高い(30〜80万円) |
| 適した場面 | 住宅用の本格ハイブリッドシステム(最推奨) |
選定ルール 5: ハイブリッド方式の選び方
- 新規構築で自家消費メイン → ハイブリッドインバーター型(最推奨)
- DIYで段階的に構築 → DC連携型(コスト抑制、シンプル)
- 既存FITシステムに蓄電池を追加 → AC連携型(後付け対応)
- 完全オフグリッド → DC連携型(商用電力接続なし)
ハイブリッドシステム 電力バランス計算機
PV発電量と消費電力量から、商用電力の必要量と自給率を計算します。
ハイブリッドシステムの電力フロー図
6. 総合システム設計シミュレーター
ここまでの各セクションの計算結果を統合し、システム全体の設計と概算費用を一括で確認できます。
統合シミュレーション
7. 導入前チェックリスト
システム選定の最終チェック
※ 本シミュレーターの計算結果は概算値です。実際の導入にあたっては専門の施工業者にご相談ください。


コメント